<ワイルド7の設定>

 原作のワイルド7は警察では処理できない犯罪者を超法規的手段で殲滅するという「特殊警察」という位置づけであった。(と言っても警察とは一線を画しているので一概にそうとも言えないが)
 リーダーの飛葉は警視長、他のメンバーはそれぞれ警視正の階級を与えられており、襟の裏側に隠された階級章を「チラッ」と光らせると、それまで非協力的だった警察の偉いさんがたちどころに平伏するさまは、一種の清涼感さえ感じさせた。

 一方、実写版では国際秘密警察の協力機関(なんじゃそりゃ?)メンバーは全て「国際秘密警察の協力員」という設定に変わっている。
スケールは国際規模だがとどのつまりはパートなのである。パートゆえに薄給で働いているのであろう。
 原作では悪徳政治家から金を巻き上げたり、悪党から奪い返した金塊の1割をちゃっかり着服するなどして稼いでいたが、実写版ではその手のシーンは一切なし!給与はいったいどうなっているのだろう?命がけの割に退職金は750ccのバイク一台分しか出ないようだし(10話「卍コンテナ」)

 秘密警察という割には公然と「秘密警察」を名乗っていたりもする(12話「悪魔のライダー」)。考えようによってはかなりヤバイ名称ではある。

また番組の方針のためか、階級にものを言わせるシーンは殆どなし(1話「復讐のヘアピンサーカス」と12話「悪魔のライダー」ぐらい)。
原作では階級章が捜査令状であり、警察手帳代わりだったのに、それに代わる礼状も身分証明も一切なし。はたから見れば白バイ警官もどきがバイクで暴走し、銃をぶっ放すというただの危ない集団となってしまった。

・・・問答無用で射殺されるほうもたまったものではない。

 別項にて述べるが、彼らが相手にするのは国際的な犯罪組織「ブラックスパイダー」。
だからといってワイルド7は世界各国を飛び回って活躍するわけでもなく活動場所は日本国内。
さらに行動範囲は東京都(甲州街道沿い)、群馬県伊香保温泉、静岡県御殿場市を頂点としたエリア内に限られている。(地図参照)
大門軍団やGメン75の皆さんよりも活動範囲が狭いのである。
ワイルド7=国際警察ならば彼らは「宇宙Gメン」(う、渋すぎ)と感じるのは飛間だけだろうか?

 犯人を即座に処刑するという合理的な設定は原作譲りである。
が、問題は時折見せる彼らの無責任さにある。暴れるだけ暴れて敵を殲滅するわけでもなく、中途半端なまま「あとは警察に任せます」、「そんなもんは警察に任せりゃいい」と夕日をバックにバックれてしまうのである!・・・おいおい君らも警察官だろ!

  とどめは最終回。ブラックスパイダーを殲滅したワイルドはブラックスパイダー以外にも犯罪組織は多数あるにもかかわらず突如として草波から全員解雇されてしまうのである!!

 こんなことでいいのだろうか?果たして国際秘密警察本部から解散許可は出たのだろうか?

 余談ではあるが、最終回、草波が「スパイダーをつぶすためだけにワイルドを組織した」ことを匂わせるセリフがあるが、これでは単なる草波の私兵ではないか?(笑)なんかよくわからん・・・。


<メンバー構成>

 続いてワイルド7のメンバー構成だが、原作では隊長の草波勝を筆頭にリーダー格の飛葉大陸、世界(殉職)、八百、オヤブン、ヘボピー、両国、チャーシュー(殉職)の第一期メンバー(「野性の7人」〜「コンクリートゲリラ」編まで)、世界とチャーシューの後任としてテル(行方不明)デカ(殉職)が配属された第二期メンバー(「千金のロード」〜「爆破105」)、テル・デカを失い、新たに女性隊員ユキを加えた第三期メンバー(「黄金の新幹線」〜最終章「魔像の十字路」にて全滅?)で編成されている。

 一方、実写版は、コードネームのみを踏襲したまったく別ものと考えてよい。
 草波隊長、アシスタントの映子(最終回で殉職)、飛葉一郎(大陸の兄・第一話で殉職)、飛葉大陸、世界、八百、オヤブン、ヘボピー、両国(殉職)、チャーシュウ<誤植ではない>の第一期メンバー、そして殉職した両国の後任としてモヒカンを加えた第二期メンバーの構成に変わっている。

 残念ながらセクシーダイナマイト(古い!)・ユキちゃんは登場しない。余談ではあるが、なぜかチャーシュウと両国が入れ替わっているというおまけまでついている。

 原作でストーリーに花を添えていた喫茶店VONのママ・イコちゃんと妹の志乃ベエは、新たに設定された店員・マリを含めまったく目立たない存在となり、番組中盤にはまったく姿を見せない。世間一般にはこれを「降板」という・・・。


敵役のブラックスパイダー、銃器・バイク等については別項で触れる。


つまり、実写版ワイルド7は原作とはまったく異なったオリジナルストーリーなのである。
どうしても原作と比較される実写版であるが、別作品として考えれば比較云々の問題ではないのである。

原作を読んでから鑑賞すると、確かにその異なる世界観に戸惑うが、回を重ねるごとにその独自路線の「味」が感じられて興味深い。
実際に見れば伝わってくると思うが、視聴者はきっと現代の「何でもCG」の無味乾燥な映像にはない「手作りの味わい」を強烈に感じることであろう。HP作者(飛間)は学生時代に自主映画サークルに所属していたので、限られた制作費でこれだけの作品を完成させたスタッフの心意気に拍手喝さい!また、なにかと難癖をつけることしか能のないバカ親どもや常識派ぶった文化人の不当な干渉や放送規制もなんのその、「不可能を可能に」すべく全力投球したその熱意、新進気鋭の監督の手による個性あふれる各エピソードetc・・・実写ワイルドの魅力は尽きない。

あえて言おう!実写ワイルドは「TVでオンエアされた長編自主映画の最高峰」である!!

(24話だけ次回予告の画面が異なるのは「映画人」の遊び心?好感が持てます。)